北総鉄道2007年度決算レポート

2008/12/3

 今年7月北総鉄道の2007年度決算が発表されました。ここではその決算について少し考察して行きたいと思います。

 

1.   輸送人員〜実にバブルの影響で激増だが〜

1:2007年度輸送人員及び旅客収入(単位:千人、百万円

利用者

2004

2005

増加率

2006

増加率

2007

増加率

2007/上

増加率

2007/下

増加率

定期外

9566

9851

3.0%

10392

5.5%

11518

10.8%

5674

9.5%

5844

12.1%

通勤

17034

17073

0.2%

17698

3.7%

18682

5.6%

9502

6.5%

9180

4.6%

通学

4841

5115

5.7%

5132

0.3%

5157

0.5%

2790

0.5%

2367

0.5%

合計

31441

32040

1.9%

33222

3.7%

35537

7.0%

17966

6.5%

17571

7.5%

収入

2004

2005

増加率

2006

増加率

2007

増加率

2007/上

増加率

2007/下

増加率

定期外

4722

4859

2.9%

5088

4.7%

5451

7.1%

2691

6.2%

2760

8.1%

通勤

5556

5552

-0.1%

5769

3.9%

6163

6.8%

3092

6.5%

3071

7.2%

通学

964

1028

6.6%

1027

-0.1%

1026

-0.1%

554

-0.2%

472

0.0%

合計

11242

11439

1.8%

11884

3.9%

12640

6.4%

6337547

5.7%

6302

7.0%

2:顧客単価推移(単位:円)

単価

2004

2005

2006

2007

2007増加分

定期外

493.6

493.2

489.6

473.3

322.4

通勤

326.2

325.2

326.0

329.9

400.4

通学

199.1

201.0

200.1

199.0

-40.0

合計

357.6

357.0

357.7

355.7

326.6

 

 さてまずは輸送人員に関して見ていきましょう。

年間:7.0%増、下半期:7.5

収入年間:6.4%増、下半期:7.0%増

 今年度は通期で乗客数7.0%、収入6.4%増、2006年度に比べ激増し特に下半期はそれぞれ7.5%、7.0%増加と昨年まで続いた好景気と住宅バブルの影響が反映された感があります。

11、定期外客〜今年も力強いけん引役だが・・・〜

年間:10.8%増、下半期:12.1

収入年間:7.1%増、下半期:8.1%増

この増加の牽引役となったのは定期外客、年間10.8%、下半期12.1%と言う激増振りを見せました。要因としては印西牧の原駅のBIGHOPや千葉ニュータウン中央駅のイオンSC南棟等、大型店の出店が続いたこと、また単価低下から見えるように住民による回数券バラ売りの定着も大きな要因と言えます。

一方単価の下落からも分かるように収益への貢献はやや落ちる感があります。これは回数券バラ売りの効果もさることながら、買い物客が都心ではなく増加著しい印西牧の原、千葉ニュータウン中央、新鎌ヶ谷等の大型店へシフトしているのではないかと考えられます。

ただしBIGHOPの運営企業MIXINGが民事再生法の適用を申請(ただしBIG HOPの営業は継続)したり、イオン等の大手スーパーが店舗削減を表明している等、今後不動産不況の影響がどういった形で出てくるか注目されます。

 

 

12、通勤定期客〜バブル崩壊後も千葉ニュータウンは堅調に推移するか〜

年間:5.6%増、下半期:4.6

収入年間:6.8%増、下半期:6.5%増

 続いて増加率が高かったのは通勤定期客、特に上半期は6.5%増加と全体の増加と同水準で定期外と共に増客のけん引役となっている側面もありました。千葉ニュータウンの入居者数が94年以来13年ぶりに1500戸の大台に乗ったことや、西白井や東松戸等沿線の区画整理事業等の新規開発地域への入居の多さをうかがわせます。特に増加分の顧客単価が定期外客を上回る高収益性で、比較的距離の長い千葉ニュータウン地区での増客が多い事をうかがわせます。

しかし下半期は建築基準法改正の影響からか4.6%増加と上半期の増加率を下回っているのが気に掛かるところです。また1028日には株価が一時期7000円を割り込む等景気悪化の懸念も大きいので影響が出てくるものと考えられます。ただし収入の増加率の変化は比較的小さく、千葉ニュータウン地区に関して言えば、90年代のバブル崩壊後、運賃値上げの行われる直前の94年度まで10%前後の増客率が続いていた(92年度11.6%、93年度8.3%、94年度10.7%)状況を考えるとやり方いかんでは影響は最小限に食いとどめられる可能性はあると思われます。

 

13、通学定期客〜学割補助は続けるべき〜

年間:0.5%増、下半期:0.5

収入年間:0.1%減、下半期:0.0%減

 最後に通学定期に関して、学割拡大後は乗客微増、収入横ばい・微減と言う傾向が続いています。今年度もその傾向が続いていて増客率は年間、下半期共に0.5%、増収率は年間0.1%、下半期0.0%の減少となっています。当初、NT外など長距離の通学客への効果が大きかったのが、段々NT内の短距離客に効果が波及していると考えられます。

そんな中2010年に印旛高校が印西牧の原駅周辺へ移転する為か、様々な論が出てきています。

北総線 高額運賃の研究@月刊千葉ニュータウン([6]誰がための通学定期補助)より

 3年前から沿線自治体が実施している通学定期の補助措置は、17年度から21年度までの5年間続けることを前提に、毎年度補助事業を実施するための予算が計上されている。なぜ、21年度までかといえば、成田新高速鉄道の開通が22年度に予定されており、とりあえずそれまでの緊急避難措置としてこの補助制度が執行されているわけである。〜中略〜

 そのイベントとは、言うまでもなく新・印旛高校の開校である。〜中略〜
 今まで、ニュータウン地区の生徒が希望をもって入学しようという高校がこの地域になかった。だから、北総鉄道の高額運賃を払ってでも、地域外の高校に通うのが一般化していた。
 しかし、これからは新・印旛高校がこうした生徒を迎え入れ、生徒や親が納得できる、高いレベルの教育を実現することになる。また、実現してもらわねばならない。地元の行政も住民も、新しい高校を全力でサポートし、県が掲げる「進学を重視した、新しい単位制高校」という理想を現実のものとしていくことが求められる。
 そうしたサポート、努力を払う一方で、地域外の高校へ通う通学生のために税金から通学定期の補助をするというのは、政策的に矛盾する。新・印旛高校の開校が具体的な日程表に上った今は、この高校の質的な充実、多くの生徒にとって真に魅力的な高校とすることを最優先すべきであり、これと矛盾する(というより、この努力の足を引っ張る)ような政策からは手を引くべきだろう。

「通学定期への自治体助成を振り返る」北総線の運賃値下げを実現する会より

営業収益131億円のうち、114億円は運賃収入です。営業外損失20億円は債務の金利で、過去においてはこれが60億円もありました。

通学定期の自治体助成制度は、25%の値下げ分を各市村が負担するものでした。当会では、北総鉄道が単独で50%値下げした場合の会社の損失を計算しました。

千葉ニュータウン地区での通学定期収入は約8億円ですから、値下げによる会社の損失は4億円です。しかしその減収分の半分は法人税と相殺されますので、損失は2億円にまで縮減されることが分かりました。自治体からの助成で値下げをすれば利用者が増えることが実証できたのですから50%値下げによりさらに損失も少なくなるものと思われます。

経営感覚として利用者への還元を持ってほしいです。

 

個人的な意見を書くとタイトルの通りこの助成そのものは今後も続けるべきと考えています。理由としては

     仮に印旛高校が移転しても自転車・徒歩等鉄道利用を避けられるのは印西市内の1部の学生のみである事

     まだまだ開発途上の千葉NTにとってはこれから子育てをする若い世代への流入が不可欠なのですがその若い世代へ「教育は地元の高校で」と言うのは負のアピールに他ならないこと

その上で考えなくてはならないのは

     現状の「北総一人儲け」の構図から脱却する為の負担割合の変更

     沿線地区の学校への通学者への補助の拡大

     現在では施策の行われていない鎌ヶ谷以西地区への拡大(成田延伸後は成田市との連携)

といったことではないかと考えます。負担割合に関してはやはり現状の自治体のみ持ち出しと言うのは健全ではないと考えますし、また他の地域からの通学者への補助は少子化に苦しむ沿線の学校へのフォローと言う側面、そして学生が沿線の駅を使うことによる駅周辺の店舗への波及効果も見込めます。また沿線のほかの地区に関しては同様の効果を期待してのことです。そう言った意味で助成の延長及び活用をきちんと考えていくべきではと考えられます。

 

2、      損益計算書〜無視できない経費増加、ポイントはリース料〜

3:損益計算書(単位:百万円)

P/L

2004

2005

増加率

2006

増加率

2007

増加率

2004

営業収益

12739

13057

2.5%

13545

3.7%

14386

6.2%

12.9%

うち鉄道

11243

11440

1.8%

11883

3.9%

12640

6.4%

12.4%

うちその他

1496

1617

8.1%

1662

2.8%

1746

5.1%

16.7%

経費

6127

6596

7.7%

6879

4.3%

7268

5.7%

18.6%

減価償却費

2247

2226

-0.9%

2192

-1.5%

2214

1.0%

-1.5%

営業費用

8374

8822

5.3%

9071

2.8%

9481

4.5%

13.2%

営業利益

4365

4234

-3.0%

4474

5.7%

4904

9.6%

12.3%

営業外損益

-2541

-2005

-21.1%

-2021

0.8%

-1837

-9.1%

-27.7%

経常利益

1824

2229

22.2%

2453

10.0%

3067

25.0%

68.1%

法人税等

737

889

20.6%

1015

14.2%

1168

15.1%

58.5%

当期純利益

988

1113

12.7%

1333

19.8%

1540

15.5%

55.9%

繰越損失

37621

36508

-3.0%

35714

-2.2%

33634

-5.8%

-10.6%

 

続いて損益計算書を見ていきます。

2-1、営業収益〜新鎌ヶ谷・東松戸完成後の展開に期待〜

営業収益:14386百万円(6.2%増)

うち運賃収入:12640百万円(6.4%増)

うちその他:1746百万円(5.1%増)

 まず営業収益に関して、全体では14386百万円と年間収益では始めて140億円を超え2004年との比較では12.9%増と順調な成長を遂げています。運賃収入は前章で書いたように6.4%増の12640百万円、そして副業等のその他収入は5.1%増となっています。副業の伸びはややに食い感はありますが、今後新鎌ヶ谷駅における新京成線高架及び成田新高速、東松戸の成田新高速の工事完成後どういった展開が行われるか注目されます。

 

2-2、営業費用〜リース関連の費用圧縮を〜

営業費用:9481百万円(4.5%増)

うち減価償却費:2214百万円(1.0%増)

うち経費:7268百万円(5.7%増)

経費増加要因

経費増加額:389百万円

修繕費(駅舎補修、車両定期検査等):153百万円(20.8%増)

リース料(新造車両1編成、パスモ用営業機器):167百万円(68.1%増)

線路使用料(→千葉ニュータウン鉄道):162百万円(7.8%増)

 営業費用に関しては全体では4.5%増の9481百万円、特に経費が5.7%増の7268百万円と増加率が高く対2004年比較では営業収益の増加を上回っています。経費増加要因としては駅舎補修等の修繕費、車両や自動改札、券売機等の営業機器などのリース料、千葉ニュータウン鉄道への線路使用料などが上げられています。修繕費に関しては必要な箇所を行っていく必要があるため年度ごとの変動が大きいのですがリース料や線路使用料に関しては費用増加の大きな要因となっている為今後より見直しが求められます。また今後成田新高速に関する問題も絡め少し後述したいと思います。

 

2-3、営業外損益、特別損益〜着実に進む債務返済と成田新高速工事に絡む特別損益の乱高下〜

営業外損失:1837百万円(9.1%減)

特別損失:358百万円(244.2%増)

営業外損失増減要因

全体改善額:147百万円

運輸施設整備支援機構への支払利息:80百万円(4.2%減少)

工事立会い費など雑収入:38百万円増加

 営業外損失に関しては昨年度に比べて147百万円、9.1%減少の1837百万円、この改善で大きいのはやはり運輸施設整備支援機構への長期未払い金の支払利息で80百万円、4.2%の減少となりました。これは借入金返済額に見合う額と考えられ、順調に返済が進んでいると見られます。今年度以降は11月に政策金利引き下げが行われるなど金利上昇リスクは小さくなっているので来年以降も減少が続くものと考えられます。

 一方特別損失は昨年の3倍増の358百万円、新車両導入による廃車や成田新高速鉄道の公示関係で出た施設の除去費などと考えられます。この分野は今後新高速鉄道の動向もありラン公言していくものと考えられます。

 

2-4、営業利益・経常利益・当期純利益〜増加ペースの鈍い営業利益が語るコスト圧縮の必要性〜

営業利益:4904百万円(9.6%増加)

経常利益:3067百万円(25.0%増加)

当期純利益:1540百万円(15.5%増加)

 各損益項目に関してはそれぞれ対前年比9.6,25.0,15.5%増加、で経常利益では初めて30億円を突破、当期純利益も法人税本格課税の2004年度以降の最高益を更新しました。

2004年度との比較ではそれぞれ12.3、68.1,55.9%増加と2004年比の営業利益を除くと営業収益の増加を上回り、営業収益の増加や鉄道建設・運輸施設整備支援機構などを中心とした有利子負債の着実な圧縮を裏付けています。ただし今後景気の悪化等を考えると営業収益の増加ペースは鈍っていくものと考えられ、特に2004年比の営業利益の減少が物語るようにコスト増加のペースが激しい状況の改善は不可欠であると考えられます。

 

3、      貸借対照表〜負債の増加に注意〜

4:貸借対照表(単位:百万円)

B/S

2005

2006

増加率

2007

増加率

流動資産

13321

11633

-12.7%

11053

-5.0%

固定資産

98618

100641

2.1%

104845

4.2%

資産合計

111939

112274

0.3%

115898

3.2%

流動負債

8352

8003

-4.2%

8710

8.8%

固定負債

115195

114545

-0.6%

115922

1.2%

負債合計

123547

122548

-0.8%

124633

1.7%

資本金

24900

24900

0.0%

24900

0.0%

未処理損失

36508

35174

-3.7%

33634

-4.4%

債務超過

11608

10274

-11.5%

8734

-15.0%

負債・資本合計

111939

112274

0.3%

115898

3.2%

 

 続いて貸借対照表を見ていきましょう。特に目を引くのは固定資産、固定負債及び資産・負債の増加傾向、固定資産は昨年から続いている傾向で今年は固定負債・負債・資産合計も増加に転じ、バランスシートが大きくなっていることが分かります。理由としては決算書ではPASMOやバリアフリー化、耐震補強などに関わる投資が挙げられています。各投資に関しては成田新高速も含め来年以降も継続する分野であり、今後この拡大傾向は続いていくものと考えられます。また年収とどうレベルで高水準にあるものの借入金返済等によるキャッシュを中心とした流動資産の減少傾向は段々小さくなってはきているものの続いていることも気に掛かるところです。

 金利は前段でも書いたように低水準で推移していきそうですが、それでもやはり負債及び総資産の推移は注目されるところです。

 また黒字基調が続いた為、ピークの1999年度440億円、債務超過で200億円を超えていた累積赤字は順調に減少し累積損失336億円、債務超過は87億円と年度決算で久しぶりに100億円を下回ったのは注目されます。

 

4、 資金収支〜京成電鉄等への返済繰り延べを検討するべきでは〜

5: 資金収支(単位:百万円)

CF

2005見込み

2005決算

2006見込み

2006決算

2007見込み

2007決算

収入

14434

14852

19298

18834

22384

21970

経費

9296

9001

15056

14415

17402

16675

支払利息

2105

2072

2007

2002

1934

1914

借入金返済

4459

4539

4282

4662

4194

4794

支出合計

15860

15612

21345

21079

23530

22783

資金過不足

-1426

-680

-2047

-1865

-1146

-813

 

 続いて資金収支についてみていきましょう。収入面・経費面に関しては上で挙げた営業収支で計上されない消費税、各種設備投資及び成田新高速鉄道工事の関係の為収入で7584百万円(対営業収益比較)、支出面では8239百万円(対経費+法人税等)大きくなっています。支出面が655百万円大きくなりますがこれは消費税分の計上と考えられます。

 また支払利息に関しては昨年から88百万円減少の1914百万円、借入金返済は132百万円増の4794百万円、支払利息に関しては鉄道建設・運輸施設整備支援機構への元本返済の進展、そして金利低下などでの減少、一方借入金返済に関しては元本返済の本格化による増加に加え、10億円前後あるとこれまで書いてきました京成電鉄等への返済が小さくならないことにより大きくなっています。

 その為資金過不足は8億円の不足となり貸借対照表の流動資産の減少につながっています。

 今後は成田新高速工事の進展、PASMOや各種補強工事、バリアフリー化の進展等設備投資が高水準で推移し、その分資金需要も高い水準で推移することを考えると資金不足の原因となっている京成電鉄等への返済繰り延べはそろそろ真面目に検討する時期に入りつつあるのではと感じます。

 

5、まとめ 

5-1、北総鉄道の現状

 北総鉄道の現状を見ると以下のリスクが浮かび上がります。

収入面

     金融不況による沿線開発の延滞

支出面

     千葉ニュータウン鉄道等への線路使用料、リース料契約の問題

     施設老朽化、バリアフリー化、PASMO導入等に伴う施設投資負担

     鉄道建設・運輸施設整備支援機構、京成電鉄等への借入金返済が巨額である事

 一方優位点として以下のことも浮かんできます

     2000年度以降8年連続の黒字で黒字拡大傾向にある事

     バブル崩壊時、失われた10年間等を通じても開発が進み基本的に増客増収傾向にあったこと

     金融不況により結果的に金利上昇リスクが低下した事

     成田新高速開業により基本的に今後増収そのものは期待できること

 

 全体的な傾向として失われた10年間を含め旺盛な成長力を示した鉄道であり、また今後を見ても金利リスクが低下したことで基本的には安定した成長が見込める状態にあると言えます。ただし千葉ニュータウン鉄道や成田新高速鉄道の線路使用料の問題や借入金返済に見られる京成電鉄等外部との関係や施設更新の問題が左右する面が大きくその面をどうしていくかと言うのが将来性を占う大きなポイントであるとも言えます。

 

5-2、法廷協議会が必要では〜成田新高速鉄道を巡る攻防を考える〜

 成田新高速鉄道開業が近づきここ最近様々な動きが出ています。

成田―羽田、鉄道で1時間構想 国交省、都心に新線計画@asahi.com9/7より
 成田、羽田両空港を1時間以内で結ぼうと、国土交通省が09年度から、東京都心に新しい鉄道路線を建設するための調査を本格化させる。世界への窓である成田と、国内網の拠点である羽田の間を移動しやすくし、総合的な交通ネットワークを充実させる狙いだ。ただ建設費は少なくとも3千億円に達する見込みで、実現には課題も多い。〜中略〜
 浅草線内は設備上の制約から高速運転が難しい。同線での高速化では、特急が各駅停車を追い抜けるよう部分的に待避線を設ける案もあり、建設費は400億円程度で済むと試算されている。ただ、自民党内に本格的な時間短縮を求める意見もあり、待避線方式よりさらに10分ほど時間を短縮できるというバイパス建設方式に国交省は傾きつつある。

 まず国土交通省では成田新高速鉄道を単に成田〜都心の速達化だけでなく、羽田〜成田両空港の速達化に生かすべく浅草線の速達化に向けた動きが現れています。

 

成田新高速鉄道 早期開通に向けた取り組み@松戸市HP

(中)「土屋駅」地元が熱望@読売新聞
土屋駅実現に向けた新たな動き@小池まさあき 日々の活動日記

 

 また松戸や成田等でもこの新線を利用して地域を活性化させようと様々な動きが見られます。国際空港が絡むとは言えこれだけ様々な動きが出てくると言う新線はやはり珍しいのではないでしょうか?

 

 10万人署名簿 国土交通大臣に提出@月刊千葉ニュータウン9/13号

 

 また千葉ニュータウンでは地元の住民団体が成田新高速鉄道開業による増収を持って運賃値下げを行うべく10万人の署名を集め、国土交通大臣に提出しました。「パフォーマンスに過ぎないのではないか」、「実務的なアプローチが必要なのでは」と言う突っ込みもありますがそれも含め長年運賃問題で苦しんできた千葉ニュータウンを中心とした沿線地域では「成田新高速が運賃適正化への最後のチャンス」とばかりに活発な動きが出てきています。

 

(8)線路使用料をめぐって(下)@月刊千葉ニュータウンより

「成田新高速鉄道事業化推進に関する調査報告書」では、「北総・公団線施設使用料」として、「列車運行に伴う維持管理費」と設定されているが、もちろん、こんなのは仮の想定とはいえ論外の話である。

北総鉄道は、いわゆる2期線と呼ばれる高砂〜新鎌ヶ谷区間の線路敷設に伴う巨額の負債ゆえに、高額の運賃を利用者に強いている。つまり、利用者はこの区間の線路の「建設費」までも負担してきたのである。成田新高速鉄道が、この区間を走る際の線路使用料として「維持管理費」しか負担しないというのは、およそ非現実的で非常識な想定というほかない。〜中略〜

高砂〜小室間の線路敷設に伴う負債の現在残高がざっと900億円として、京成電鉄が都市基盤整備公団から小室〜印旛日医大間の線路施設をゲットした時の対価150億円の6倍、距離(12・5km対19・8km)を勘案したキロ当たりでみると約3・8倍である。この3・8倍というコスト差を線路使用料の算定に反映させた場合(当然そうすべきだと思うが)、小室〜印旛日医大間の線路使用料約20億円を前提にすると、高砂〜小室間の線路使用料は約76億円、ナンと、現在北総鉄道が払っている巨額負債の返済額をも上回る、ベラボーな額になってしまう。

 実際現在成田新高速開業後に京成電鉄が北総鉄道に支払う線路使用料が確定していないこともあり、これまでの経緯から「京成電鉄に美味しいところを奪われてたまるか」と言った空気は相当なものと思われます。

 そして何より額の大小はともかく沿線自治体はこのプロジェクトへ向けて財政負担を行っているため、今年3月羽田空港の整備工事に対し財政負担を行っている横浜市が羽田空港の再国際化に関する意見書を提出し話題になりましたが同じような事がよりこじれた形でおきる可能性は否定できないのではないでしょうか?

こういった事態が起これば成田新高速にとってもこの路線の開業によって潤う京成電鉄や北総鉄道自身にとっても何よりこのプロジェクトで受益を受ける利用者にとっても自治体にとっても利益は無いでしょう。そう言った意味で何らかのフェアで拘束力のある話し合いをもつ必要があると考えられます。

 

地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(平成19年10月1日施行)スキーム概要より

目的

地域における鉄道やバスなどの公共交通のおかれた状況が厳しさを増しつつあることから、地域公共交通の活性化・再生を通じた魅力ある地方を創出するため、地域公共交通の活性化・再生に関して、市町村を中心とした地域関係者の連携による取組みを国が総合的に支援

 

地域の関係者が地域公共交通について総合的に検討し、地域住民の移動手段の確保、都市部におけるLRTの導入や乗継の改善等、地域公共交通のあらゆる課題について、当該地域にとって最適な公共交通のあり方について合意形成を図り、合意に基づき各主体が責任を持って推進

 

地域公共交通の活性化及び再生に関する法律と言う法律が昨年10月に施行されました。この法律は主にLRT等の設置を支援する為に作られた法律なのですが、「市町村、公共交通事業者道路管理者住民、港湾管理者、公安委員会 」による協議会を設置して「地域公共交通総合連携計画」を策定しそれに基づいて地域の公共交通の活性化を行っていこうと言う枠組みで、公安委員会・住民を除く各関係者は参加要請応諾義務を持ち、参加者は協議結果の尊重義務を持つとの事です。

住民・自治体・事業者が参加し、かつ協議結果尊重義務がある事でフェアで拘束力のある話し合いができるのではと考えられます。

本来がLRTの導入に関するものなので、無理な部分もありますが、「北総鉄道」と言う地域の通勤・通学を担う鉄道の活性化によって、千葉ニュータウン・鎌ヶ谷・松戸・市川等の沿線地域の魅力を増大させると言うのであれば少なくとも目的から外れたものではないと思われます。 何よりも前段で挙げた千葉ニュータウンでの学割補助の問題や、市町村の運行するコミュニティバスを中心としたバス路線との連携の問題、ここ最近沿線に大挙して進出した大型店等との連携、近辺の大学の通学バス等、成田新高速を抜きにしても北総鉄道と地域とのwin-winな関係を作る為にやるべきテーマはいくらでもあります。  また一見京成電鉄に不利な話し合いになるかもしれませんが、北総鉄道と言う子会社の活性化・増客で根本利益が出来ますし、八千代・佐倉等のドル箱地区の成長性が東葉高速の開業後振るわない中でこの成長力旺盛な子会社の活性化は親会社としても重要なことになるでしょう。  またテロや伝染病等で利用者の増減の激しい空港アクセスビジネスの補完と言う意味でもローカル輸送の活性化は不可欠のように感じます。  そう言った意味でこれまでの行き当たりばったりの「生かさず殺さず」の状況からの脱却は中長期的には利益に結びつくのではないでしょうか?

何度も書いている様に各関係者の腰の引けた態度による北総鉄道の「生かさず殺さず」の状況はその成長力を阻害しています。その状況を脱却するためにも各関係者がこの機会を活用することが求められているのではないでしょうか?

 

関連リンク

北総鉄道

北総・公団鉄道運賃値下げを実現する会

月刊千葉NT

街づくりかまがや

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