千葉県鉄道乗車人員推移から見る千葉の鉄道の現状

2006.10.15

 千葉県のHPを見ると毎回統計情報の充実振りに感心するのですがそんな千葉県の交通計画課のHPに鉄道の利用状況に関するデータがありましたので、そのデータを基に千葉県の鉄道各線の状況を少し分析してみます。

まず基データは以下になります。

県内鉄道各線・各駅乗車人員の推移(1日平均) by千葉県交通計画課

 

1、概要〜分類・分析〜

 そこから各線の2004年度、2003年度、1999年度のデータを抜き出してみたのが以下の表です。

JR

1999

2003

2004

対前年

99年

総武線

750925

743532

740402

-0.4%

-1.4%

常磐線

484959

471499

467612

-0.8%

-3.6%

総武本線

96737

91139

89886

-1.4%

-7.1%

外房線

104930

108396

109448

1.0%

4.3%

内房線

110602

102065

101057

-1.0%

-8.6%

成田線

40410

38242

39008

2.0%

-3.5%

我孫子線

27760

24895

24237

-2.6%

-12.7%

久留里線

3327

2837

2714

-4.3%

-18.4%

東金線

6750

6937

7117

2.6%

5.4%

武蔵野線

67159

70490

71362

1.2%

6.3%

京葉線

195839

238667

242146

1.5%

23.6%

私鉄

1999

2003

2004

対前年

99年

東西線

242586

236871

234046

-1.2%

-3.5%

京成本線

316714

299603

299833

0.1%

-5.3%

京成千葉

38296

36430

36284

-0.4%

-5.3%

京成ちはら

6789

7932

8212

3.5%

21.0%

東武野田

300867

292149

289796

-0.8%

-3.7%

新京成

279587

270300

270428

0.0%

-3.3%

総武流山

14850

14160

13379

-5.5%

-9.9%

小湊鉄道

6427

5194

4707

-9.4%

-26.8%

銚子電鉄

2261

1835

1813

-1.2%

-19.8%

北総鉄道

54624

56979

57479

0.9%

5.2%

都営新宿線

29533

31438

31325

-0.4%

6.1%

いすみ鉄道

1847

1410

1257

-10.9%

-31.9%

東葉高速

103708

115275

114643

-0.5%

10.5%

1:千葉県各線の1日辺りの乗車人員(単位:人、赤太字:対前年減少2%以上、対99年減少10%以上、赤字:対前年減少12%、対99年減少510%、青太字:対前年増加2%以上、対99年増加5%以上)

 

この表から各線の状況を分類すると以下のようになります。以下対前年度の増客路線では太字で示しています。

1-1、増加路線〜新しい路線とNT路線が目立つ〜

乗客急増路線(対99年増加率5%以上)

JR

1999

2003

2004

対前年

99年

東金線

6750

6937

7117

2.6%

5.4%

武蔵野線

67159

70490

71362

1.2%

6.3%

京葉線

195839

238667

242146

1.5%

23.6%

外房線

104930

108396

109448

1.0%

4.3%

私鉄

1999

2003

2004

対前年

99年

京成ちはら

6789

7932

8212

3.5%

21.0%

北総鉄道

54624

56979

57479

0.9%

5.2%

都営新宿線

29533

31438

31325

-0.4%

6.1%

東葉高速

103708

115275

114643

-0.5%

10.5%

2:千葉県内乗客増加路線の1日辺りの乗車人員(単位:人、赤字:対前年減少青太字:対前年増加2%以上、対99年増加5%以上、青字:対前年増加路線)

 

JRは既存の幹線の混雑緩和用バイパス路線や連絡環状線など比較的新しい路線(京葉線・武蔵野線)、私鉄ではNT開発地を走る新線(京成千原線、北総鉄道、東葉高速鉄道)が目立ちます。ただしJRでも外房線は再開発が進む蘇我、千葉・市原NTの玄関口である鎌取の増加が全体を引っ張っている為私鉄型の増加、都営新宿線はメトロ東西線、総武線のバイパスと言う意味合いを考えるとJR型と言えそうです。

JRの2線に関しては武蔵野線が埼玉県内の混雑率で参考程度と言うのを考えても混雑率が激しく今後混雑緩和の必要があると考えられます。

新宿線に関しては乗客が増えているとは言え、まだまだ混雑率に余裕があり又最新年度では現象と考えるとより積極的な展開も考えられます。

北総・東葉・千原のNT3線に関しては乗客が増加しているとは言え千葉急行の経営破たんの受け皿路線である千原線を筆頭に収益としては問題があり、ここ2年間乗客が減少している東葉は特にですが各線積極的な乗客誘致策が期待されます。

 外房線・東金線に関しては外房線は蘇我や鎌取の開発、東金線は沿線の城西国際大学の学部拡充の影響が大きく、追い風傾向にあります。今後はそれを生かすような施策が求められます。

 

1-2、微減路線〜減少路線〜さすがの混雑幹線東西線・総武線・常磐線も微減傾向

JR

1999

2003

2004

対前年

99年

総武線

750925

743532

740402

-0.4%

-1.4%

常磐線

484959

471499

467612

-0.8%

-3.6%

私鉄

1999

2003

2004

対前年

99年

東西線

242586

236871

234046

-1.2%

-3.5%

東武野田

300867

292149

289796

-0.8%

-3.7%

新京成

279587

270300

270428

0.0%

-3.3%

3:微減〜減少各線の1日辺りの乗車人員(単位:人、赤太字:対前年減少2%以上、対99年減少10%以上、赤字:対前年減少12%、対99年減少510%、青太字:対前年増加2%以上、対99年増加5%以上)

 

微減傾向の路線としてはJRの総武線、常磐線、メトロの東西線と言う千葉県を代表する通勤幹線3路線が入っています。さすがの3大路線も京葉線、新宿線などのバイパス線の成長や、全体的な定期客の減少傾向の影響を受けていると言えます。特に常磐線に関してはつくばエクスプレス(以下TX)の影響が今後出てくるのもあり、混雑緩和からより積極的な乗客誘致に動く時期に入ってきていると言えます。常磐線に関してはTX開業を期に特別快速の運行や視線ともいえる我孫子線との直通強化等積極策が見られます。また東西線も夜間の快速増発など本腰を入れてきていると言えます。今後総武線の展開に期待したい所です。

私鉄では新京成、東武野田線の環状線2路線が微減路線に入っています。新京成に関しては99年度以前に91年の北総2期線、開業96年の東葉高速鉄道開業の影響がやっと和らいできた感じで今後京成千葉線との直通が予定され活性化が期待されます。

 一方東武野田線は現状微減で済んでいますが、これは99年の新鎌ヶ谷総合駅開業の影響が大きく、又今後TXの影響が出てくる為挽回策が期待されます。

 

1-3、減少路線〜苦戦する京成電鉄とJR幹線郊外部、空港アクセスの収益不安定化〜

JR

1999

2003

2004

対前年

99年

総武本線

96737

91139

89886

-1.4%

-7.1%

内房線

110602

102065

101057

-1.0%

-8.6%

成田線

40410

38242

39008

2.0%

-3.5%

私鉄

1999

2003

2004

対前年

99年

京成本線

316714

299603

299833

0.1%

-5.3%

京成千葉

38296

36430

36284

-0.4%

-5.3%

4:減少各線の1日辺りの乗車人員(単位:人、赤太字:対前年減少2%以上、対99年減少10%以上、赤字:対前年減少1〜2%、対99年減少5〜10%、青太字:対前年増加2%以上、対99年増加5%以上)

減少路線ではJRでは内房線、総武本線が入っていて千葉・蘇我以遠での幹線の苦戦が伺えます。外房線に関しても千葉市内を除けば近い状況にあると言えるでしょう。総武本線は90年代に東関道開通による高速バスによる特急壊滅の影響を引きずり、内房線はアクアライン開業、2007年度に全通が予定されている館山自動車道により90年代の総武本線の状況がそのまま再現され、2005年12月のダイヤ改正により昼間の特急の大半が廃止あるいは臨時格下げの憂き目に会いました。とは言えまだまだ利用者も多く、思い切ったてこ入れが期待されます。

 又同じ様な存在の成田線に関しては空港アクセス客の増加傾向の影響からか微減で済んでいます。ただし同じく空港アクセスを担う京成本線も含めテロや戦争など国際社会の影響からここ最近減少〜激増を繰り返していて収益の安定性と言う意味で空港アクセス以外での乗客誘致が求められます。

 私鉄では京成本線、千葉線の2路線が減少路線となっていて苦戦が伺えます。共にJR総武線と並行し、京成本線に関しては唯一の独占区間であった八千代市に関しても東葉高速の影響で乗客減となった影響が大きく、各駅停車のみのローカル線となっている千葉線に関しては競争力の無さが目立ちます。千葉線に関しては今後新京成との直通に期待したい所ですが、両線とも今後開業する成田空港アクセス鉄道により空港アクセスの負担が軽減される為思い切った策が求められます。

 

1-4、減少〜激減路線〜活性化策が講じられる我孫子線と生き残りが問われるローカル線〜

JR

1999

2003

2004

対前年

99年

我孫子線

27760

24895

24237

-2.6%

-12.7%

久留里線

3327

2837

2714

-4.3%

-18.4%

私鉄

1999

2003

2004

対前年

99年

総武流山

14850

14160

13379

-5.5%

-9.9%

小湊鉄道

6427

5194

4707

-9.4%

-26.8%

銚子電鉄

2261

1835

1813

-1.2%

-19.8%

いすみ鉄道

1847

1410

1257

-10.9%

-31.9%

5:激減各線の1日辺りの乗車人員(単位:人、赤太字:対前年減少2%以上、対99年減少10%以上、赤字:対前年減少12%、対99年減少510%、青太字:対前年増加2%以上、対99年増加5%以上)

 

我孫子線を除くと非電化あるいは短距離のローカル線が目立ち、ローカル線の危機的状況が浮かび上がります。激減路線ではある物の唯一の例外我孫子線に関しては20063月のダイヤ改正で日中の列車の半数が常磐線上の乗り入れを果し,今後成田空港アクセス鉄道の影響による活性化も期待されます。

 他の路線に関しては相当厳しい状況にあると言えます。総武流山電鉄がやや減少傾向が緩やかなのですが、ここもTX開業の影響が今後現れる為、沿線開発による活性化の可能性もありますが、基本的には他線並みの厳しさがあると言えます。銚子電鉄が19.8%となっていますが各線おおむね2035%の乗客をわずか5年で失い2004年度の減少状況から考えても銚子電鉄を除きその傾向が強まっていると言うのは多かれ少なかれ路線そのものの存在意義が問われていると言っても過言ではないのではないでしょうか?

 

2、データから見えてくる千葉の鉄道の課題と対応

上の分析から見えてくる千葉の鉄道の課題として以下のことが挙げられます。

 

1、     乗客が激減しているローカル線の存続問題

2、     千葉以遠の幹線のローカル化対策

3、     乗客減少が続く京成電鉄の活性化策

 これらについて少し見ていきましょう。

2-1、     客が激減しているローカル線の存続問題

スタンス〜まずは残すべき〜

 まずこの問題に関しての筆者なりのスタンスを示しておくと

2006年現在の状況で考えるならばここ5年程度はローカル線廃線に適さない時期であり、よって少なくとも短期的には存続を前提に考えていくべきである」

 と言う感じになります。さて何故現状がローカル線廃線に適さないのかその理由を述べると以下の2つの要因が挙げられます。

,ガソリン価格の高騰

,市町村合併、高校統廃合などの地域再編期である事

 

,ガソリン価格の高騰

 

まずガソリン価格についてみていきます。

 

レギュラーガソリン

1999

2004

2006

2004/1999

2006/2004

2006/1999

全国

91

100

131

9.89%

31.00%

43.96%

千葉

89

99

127

11.24%

28.28%

42.70%

群馬

86

96

125

11.63%

30.21%

45.35%

6:レギュラーガソリン店頭価格推移(単位:円、各年度3月の価格、石油情報センター調べ)

上の表2はレギュラーガソリン店頭価格の推移を示した物です。99年をボトムに急激な上昇傾向にあり,ここ最近は2年で30%と特に上昇カーブが急激化している事が分かります。

2004年度のデータまで見て5年間の上昇傾向で鉄道離れが起こらなかったから今後も相当の事が無いと鉄道回帰は無い」と言う見方も出来ますが,ただそれだけでは判断できないと感じます。と言うのは

     2005年以降の上昇率が高く、一歩間違えれば相当なレベルに達する可能性がある

     通勤の交通費は企業負担のため、ガソリン代の負担増が家計レベルで直結しない

     車の所有に懸かる固定費(保険・車庫)の割合が高く、購入費用の償却の問題がある

と言った事情があり、ガソリン代上昇による影響は短期的に現れづらい構造にあることが挙げられます。また交通費の増加は企業の収益にも影響するでしょうし、家計の消費を冷やす要因ともなりえます。

今後このガソリン代の高騰がどのレベルまでになるか、その影響がどこまで出るかを見定めておく必要があるために現状の路線を維持する必要があるわけです。

 

,市町村合併、高校統廃合などの地域再編期である事

鉄道会社

合併済み

合併協廃止

いすみ鉄道

2005いすみ市(旧夷隅町・旧大原町・旧岬町)

 

小湊鉄道

 

 

銚子電鉄

 

銚子市・東庄町

総武流山鉄道

 

 

7:ローカル線沿線市町村合併状況(千葉県市町村課

 

統合

学科増設

いすみ鉄道

2004大多喜・大多喜女子→大多喜

2004 大多喜(英語)

小湊鉄道

2005鶴舞商業・市原園芸→鶴舞商業

2005鶴舞商業(環境系)

銚子電鉄

2008銚子水産・銚子商業→銚子商業

2008銚子商業(情報処理)

総武流山鉄道

 

 

8:ローカル線沿線県立高校再編状況(千葉県教育委員会

上の表は市町村の合併状況と高校の統廃合を含む再編状況を纏めた物です。共に2004年度以降に実施がなされている事が分かります。総武流山鉄道を除くとどちらかあるいは両方とも実施されているあるいは実施予定となっています。

特に影響の大きい高校の合併に関しては基本的には合併した高校に新しい学科がつく事で広域的に通学生を集める可能性があることや、学校が減る事で遠距離通学が増える可能性が高くなる事を考慮すると影響がはっきりするまで時間がかかるといえます。

以上の事より基本的に存続を前提に考えて行きたいと思います。

 

各線の取り組み〜観光主体が目立つ〜

まず各線の活性化に向けた取り組みを見ていきます。

房総横断鉄道活性化プログラム(小湊鉄道、いすみ鉄道)

いすみ鉄道再生会議(いすみ鉄道)

上の2つのHPは千葉県交通計画課からのLINKですが、基本的には

     企画切符やツアー開催などによる観光客誘致

     シンポジウム開催などによる住民意識の高揚

と言った観点での活性化策が計画され行われているようです

銚子電鉄緊急メッセージ

近未来軌道転換可能性地図

銚子電鉄の場合は他の路線と少し違うのは乗客減少と言う通常のローカル線問題に加え、親会社の倒産や背任など通常の企業問題と言う事態も加わっている事、濡れせんべいの販売と言う所謂副業の存在が大きい事が挙げられます。

その中で再生計画を策定し支援体制に向かって現在動いている最中と言った所です。

小京都・小江戸探索

 総武流山鉄道に関しては特に活性化策が見当たらないと言った感じです。

 

 総武流山鉄道を除くと基本的に沿線住民への危機意識の共有が始まり、観光等の活性化への取り組みが進んでいると言った感じがあります。

 

今後の取り組み〜いかに存在意義を高めるか〜

私の勤め先は現在群馬県の企業で俗に車社会と言われている地域です。そこでもともと群馬に住み続けている同僚と喫煙コーナー等で雑談を交わしている事も多いのですが、そこで中学生のお子さんを持つ女性の同僚から非常に印象に残る事を言われた事があります。どういった事かと言うと「うちの子には出来るだけ近い高校に通って欲しい、電車通学になると本当に高くつくから」と言った事でした。正直な所私の高校受験の際には母にもともとの志望校をなんだかんだと家から遠く偏差値の高い学校に変更させられた身(恨んではいないが)としては信じられませんでした。

あくまで1個人の意見ではあるのですが、案外この言葉は地方ローカル線沿線の住民の意識を象徴しているし、更に地方ローカル線の問題点を浮き彫りにしているのではと感じます。

即ち

     利用しづらいので出来れば利用したくない鉄道

→高い運賃、不便なダイヤ(本数の少なさ、特急・新幹線など幹線鉄道との接続の悪さ、始発の遅さ、終電の速さ)等

     利用しづらい鉄道の為に沿線住民の行動が制限される

→進学、飲酒を伴う会合、車が不便な大都市への移動等

前者は良く鉄道系HPで話題になる点ですが、実は見逃されがちな後者と言うのは地域の活気と言う意味で大きな問題です。進学の制限は若い芽を摘むことになりますし、飲酒を伴う会合が少ない地域は普通活気があるとはいえないでしょう。また大都市へのアクセスも情報技術が発達してもと言うよりもしたからこそこれからの地域の活力に重要とはいえないでしょうか?

上の施策も含めてローカル線の活性化で忘れられがちなのはこう言った「根本的な利便性の向上」と言う点ではないでしょうか?

最近廃線の危機がささやかれている茨城の鹿島鉄道では期間限定ではありますが通学定期2割引と言う施策が行われています。

この基になったのはこのHPでも取り上げている北総鉄道の通学定期の割引拡大なのですがこの施策はまさに運賃の高さと言う鉄道側の要因が地域の活力に影を落としているのを緩和して鉄道―地域の両方の活性化を狙った施策です。こう言った施策はローカル線にこそ必要なのではないでしょうか?

ローカル線活性化に関しては観光だけでなく沿線住民の利用抵抗を緩和して鉄道だけでなく地域の活性化にも結びつけるWin-Winの施策が必要ではないだろうか?

 

 

2-2、千葉以遠の幹線のローカル化対策

2-2-1、現状〜高速バスに侵食される各線〜

続いて千葉以遠の各線についてみていきます。まずは我孫子線を除く各路線の現状を見ていきましょう。

区間

種別

本数(2000)

本数(2006)

本数増減

東京〜鴨川

バス

8

20

12

同上

特急

9

9

0

東京〜勝浦

バス

 

8

8

同上

特急

9

10

1

千葉〜鴨川

バス

6

9

3

同上

特急乗り継ぎ

9

9

0

9:外房線の競合状況(2000年は4-5、京葉線進化論、2006年はJTB時刻表2006年4月号参照)

まずは外房線に関してみていきましょう。高速バスに関しては鴨川方面の本数が倍増して特急の本数を凌駕し、新規に勝浦行きが出来ている物の、基本的に鴨川行きは途中バス停顧客を見込んでの本数でまだまだ競争できそうな気配にあり。それに伴い途中勝浦までの特急が増えていることがわかります。

基本的に最大の需要発生地である茂原方面への高速バスが無い事からも分かるようにアクアラインがらみの高速バスの影響は決して大きいわけで無く、また新型特急車両の導入等競争力強化の施策を行っている最中と言えそうです。

 

区間

特急本数(2000)

バス本数(2000)

特急本数(2006)

バス本数(2006)

増減(特急)

増減(バス)

東京〜鹿嶋

1

60

0

75

-1

15

〜佐原

2

6

2

10

0

4

〜銚子

7

31

8

41

1

10

〜八日市場

7

6

7

9

0

3

10:総武本線の競合状況(2000年は4-4、総武TRAINはどこにいく、2006年はJTB時刻表2006年4月号参照)

 つづいて総武本線に関してみていきましょう。鹿島神宮方面への特急は下りに関してはとうとう本数が0になり2000年段階で高速バスとの決着はついていたとは言え完全敗北の様相を呈してきました。また特急減便の段階で直通が増やされた快速も壊滅状態でJRは多客期を除き基本的にこの地区の幹線輸送をあきらめてしまったかのようにも見えます。

 総武本線銚子方面に関しては高速バスの攻勢も厳しいですが新型特急を200512月改正から投入したり佐原回りの銚子行きを再設定するなどやっと重い腰を上げて挽回に向かった感があります。

 

区間

種別

本数(2000)

本数(2006)

本数増減

東京〜君津

特急

12

7

-5

同上

快速

16

20

4

鉄道合計

 

28

27

-1

東京〜木更津

バス

 

80

80

東京〜君津

バス

8

79

71

東京〜館山

特急

12

6

-6

 

バス

 

10

10

11:内房線の競合状況(2000年は4-5、京葉線進化論、2006年はJTB時刻表2006年4月号参照)

最後に内房線に関してみていきましょう。内房線は現在かつての総武本線がそうであったようにアクアライン経由の高速バスの攻勢を受けている真っ最中です。特に内房線の大票田である木更津・君津地区に関してはここ6年間で一気に3系統780往復も本数が増え、それに伴い200512月改正から昼間の特急が殆ど廃止あるいは季節運行と言う状況になり、その補完として快速が1時間に1本直通すると言うまるで鹿島線との相似形となっているのが、厳しさを浮き彫りにします。ただし内房線と鹿島線の最大の違いは内房線の場合、高速バスが最も多い木更津・君津でも東京からほぼ780kmと100km圏内にあり,また両市の人口が共に10万人前後あると言うのが最大の違いで極端な書き方になりますがつくばエクスプレス開業によって常磐道の高速バスが苦戦を始めたようにやりようによっては挽回策はありうると感じられます。

 

2-2-2、現状の対策〜バスとの競争を避け近距離を中心とした活性化策〜

本線

支線

本数(2000.3)

本数(2006.4)

常磐線

成田線

我孫子発(7:52〜9:40,16:48〜21:33)11本

我孫子発(7:52〜23:15)16本

総武本線

千葉以遠

千葉発(5:46〜23:38)25本

千葉発(5:45〜23:38)26本

総武・京葉線

内房線

蘇我発(5:58〜22:21)16本

蘇我発(5:59〜22:25)20本

 

外房線

蘇我発(8:56〜21:57)13本

蘇我発(5:26〜21:58)16本

12:各千葉以遠幹線の本線直通状況(2000年度は4-1、千葉の鉄道の特徴、2006年度はJTB時刻表2006/4月号参照)

それで続いて幹線千葉以遠に関してみていきます。上の表は対象となる各線の料金不要列車(主に快速)の直通状況を書いた物です。内・外房線に関しては昨年これを見ると1日辺り15本程度直通列車が増えていることがわかります。内訳としては内・外房線は主に200410月ダイヤ改正以降、我孫子線に関しては20063月のダイヤ改正により日中1時間ごとの直通を開始した事もあって本数で1.5倍近く、運行時間帯では終電近くまで直通列車が走る事で充実してきています。

これらからJRとしては乗客減少の対策として少なくとも比較短距離の地域に関しては一定の充実が図られている事が分かります。

 

JR

1999

2003

2004

対前年

99年

総武本線

24333

23256

22519

-3.2%

-7.5%

内房線

4650

5347

5425

1.5%

16.7%

外房線

63898

69722

70907

1.7%

11.0%

13:千葉以遠各線千葉市内駅乗車人員推移(単位:/日)

上の表は千葉市内各線の乗車人員の推移ですが本数増加がそれほど無い総武本線では路線全体の状況に近似していますが、他の路線は路線全体の状況に反してあるいはそれ以上に乗客増加が見られ、最近のダイヤ改正でのてこ入れの狙いが見えてきます。

即ち高速バスとの競合の激しい地域での競争は避け、人口も増えている比較近距離地域の活性化を狙うと言う事です。

 巻き返し策を考える〜高速バスの盲点〜

 

系統

主要ターミナル

内房線

東京〜木更津

東京駅、潮見駅、浜松町駅、品川駅

東京〜君津

東京駅、潮見駅、

東京〜館山

東京駅

千葉〜館山

千葉駅、千葉みなと駅、千葉中央駅

総武・成田

東京〜鹿嶋

東京駅、浜松町駅、お台場、TDR、幕張

東京〜佐原

東京駅、浜松町駅

東京〜銚子

東京駅、浜松町駅

東京〜八日市場

東京駅

外房線

東京〜鴨川

東京駅、浜松町駅

東京〜勝浦

東京駅、浜松町駅

千葉〜鴨川

千葉駅

14:主要高速バスのターミナル(JTB時刻表4月号調べ)

それでは追い込まれたJR各線の対抗策を考えていきましょう。上の表は最大のライバルである高速バスのターミナルを調べた物です。特徴として以下のことが挙げられます。

     東京地区のターミナルは東京駅・浜松町駅・品川駅を中心に山手線東部の駅が多い

     千葉地区のターミナルは千葉駅・千葉中央駅の千葉市内の中心部・ターミナル、あるいは幕張・千葉みなと等の京葉線沿線が多い

 

運行会社の絡みもあるがこれらの点から浮かび上がる高速バスの欠点は

     都心スルーに時間がかかるため山手線西部の3大ターミナル(渋谷・新宿・池袋)に弱い

     道路事情の悪さから京葉地区主要ターミナル(津田沼・船橋・市川・八幡)に弱い

となると考えられる。

 

 この地区の鉄道の挽回策を考えるとこの高速バスの弱点を突くことは考えられないでしょうか?

 すなわち

     対京葉地区用へは総武線直通快速でフォロー、

     特急は総武本線経由山手貨物線直通で渋谷・新宿・池袋・赤羽・大宮直通とする

と言う事です。

新宿直通特急と総武直通快速の強化で高速バスに対抗できないだろうか?

3、乗客減少が続く京成電鉄の活性化策

 

1999

2003

2004

99年

対前年

市川市内

33313

30554

29980

-10.0%

-1.9%

除く特急停車駅

16409

14881

14360

-12.5%

-3.5%

船橋市内

74525

68643

68497

-8.1%

-0.2%

除く特急停車駅

23573

23154

23498

-0.3%

1.5%

習志野市内

55576

53859

53668

-3.4%

-0.4%

八千代市内

64568

59565

58736

-9.0%

-1.4%

佐倉市内

47177

43894

43270

-8.3%

-1.4%

酒々井・成田

25948

25997

26505

2.1%

2.0%

空港近辺

15607

17091

19177

22.9%

12.2%

千葉線

38296

36430

36284

-5.3%

-0.4%

千原線

6789

7932

8212

21.0%

3.5%

本線全体

316714

299603

299833

-5.3%

0.1%

15:京成電鉄乗車人員地域別分析(赤字:対99年5%以上減少、赤太字:対99年10%以上減少、青字:対99年5%以上増加、青太字:対99年10%以上増加)

 上の表は京成電鉄地域別の乗車人員の増減を表したものです。分類すると

増加:酒々井・成田地域、空港近辺、千原線

微減:船橋市(特急停車駅を除く)、習志野市

減少:市川市、船橋市、八千代市、佐倉市

 と言った感じになります。増加している地域は成田空港アクセスと、NT開発の進む成田、千原線沿線、微減で済んでいる地域は船橋駅を除く船橋市と習志野市、それ以外の地域は減少地域となっています。減少地域の特徴を分析すると

地域

要因

市川市内

快速設定による通過駅の乗客減少

船橋駅、八千代市内

東葉高速との競合

佐倉

通勤特急や通勤快速などJRの攻勢

千葉線

JRとの競合

16:減少地域の分析

 上の表は減少地域の減少要因を分析した物です。ダイヤ変更による悪影響を受けた市川市内を除きJRや東葉高速と言う競合相手に苦戦している事が伺えます。それに対し京成電鉄が何の対策もとって来なかったかと言えばそうではありません。特に

1996年のダイヤ改正

     ラッシュ時間帯の特急で5分弱と言うスピードアップをして東葉高速の攻勢に備える。2002年のダイヤ改正・

     急行を実質廃止(押上〜高砂間の残るのみ)して

     昼間時間帯は停車駅の少ない快速に置き換える

     ラッシュ時間帯には上野行の新通勤特急を設定して速達列車を増強

等ダイヤを改正し、競争力強化を図っています。その為習志野・船橋市内ではJRとの競合の中下げ止まりの傾向が現れているわけですが、特に主眼を置いた八千代・佐倉地域での減少に歯止めがかからず市川市内の減少を招いているわけです。

 

施策

関係地域

想定される影響

2007年新京成〜千葉線乗り入れ

千葉線

・新京成〜千葉線沿線の乗客増加

2010年成田空港アクセス鉄道開業

酒々井・成田

空港周辺

・空港アクセス客のアクセス鉄道移転

      成田地域での競合

      スカイライナーのアクセス鉄道移転

17:今後の京成電鉄の施策

又今後の施策を見ると新京成〜千葉線乗り入れで千葉線は活性化されるものの、成田空港アクセス鉄道開業で数少なくなった成長地域でも最大の成田周辺に関しても今後停滞が予想されます。その為に新たな成長施策を考える必要が出てきます。

 

 

1999

2003

2004

99年

対前年

学園前

1157

1919

1949

68.5%

1.6%

おゆみの

823

1248

1340

62.8%

7.4%

ちはら台

1749

1815

1885

7.8%

3.9%

千原線NT地区

3729

4982

5174

38.8%

3.9%

鎌取

13939

16086

16530

18.6%

2.8%

合計

17668

21068

21704

22.8%

3.0%

京成シェア

21.1%

23.6%

23.8%

 

 

18:千原線千葉・市原NT地区(赤字:対99年5%以上減少、赤太字:対99年10%以上減少、青字:対99年5%以上増加、青太字:対99年10%以上増加)

上の表は最後に残った成長地域である千原線の末端である千葉・市原NT地域駅と競合関係にあるJR鎌取駅での乗客の推移です。見ると千原線で5年間40%弱、鎌取駅で5年間20%弱と急成長を遂げている事が分かります。

更にこの地域では駅数が3つあり駅へのアクセスを考えると有利な物の京成のシェアは上がって来てはいるものの1/4以下と非常に低く、今後の梃入れ次第では急成長の余地が大きい事が分かります。

と考えると今後成田空港アクセス鉄道開業を機に出来る本線ダイヤの余裕を生かして京成本線〜千葉線〜千原線直通の特急を走らせ活性化に結び付けられないでしょうか?

 

 

対東京時間

間隔(本数)

朝ラッシュ京葉通快

41

39分(2本)

朝ラッシュ総武快速

56

30分(2本)

朝ラッシュ普通(京葉快速含む)

4856

1316(4)

通勤特急想定

54

20(3)

昼間直通快速

5153

2本(10:0016:00

普通

5661

1519分(4本)

京成特急想定

46

10分(6本)

19:千原線特急想定(朝ラッシュは鎌取発7:00〜8:00で想定、京成特急想定区間は学園前〜日暮里間)

実際前に書いたダイヤ案で現状の鎌取駅のダイヤ見ると朝ラッシュ時はやや厳しい物の昼間は優位に立てることが分かります。特に昼間は直通快速が少なく千葉以遠へ行こうとすると乗換が必要な為その面でも競争力があると考えられます。

今後成田空港アクセス鉄道開業で数少ない成田地域も競合関係に入る京成電鉄は千原線直通特急の設定で新たなる成長地域を開拓できないだろうか?

3、まとめ

今回千葉県内の鉄道乗車人員を基に分析を行ってきて最も感じたのは「に書いたときと問題点は変わらない、あるいはより悪化しているケースが目立つなぁ」と言う事でした。即ちJRの複々線区間である総武線、常磐線やメトロ東西線などの通勤幹線は堅調、そして新規路線である京葉線や北総線は増加基調が続いている物の京成電鉄の競争力は弱く、また千葉以遠での高速バスとの競合はより鉄道側不利となっていると言う点です。極端に書いてしまえば結論としてのダイヤ案等は6年も前に書いた各案がそのまま使えると言っても良く強いて言えばより詳細に中間的な案が必要と言う事でしょうか?

ローカル線に関しては多かれ少なかれ存在が問われていると言うのは言うまでもありません。ただ6、ガソリン価格高騰から見えるもの〜潜在的交通弱者について〜でも書いたように車社会と言うのは利点も多いものの車社会ゆえの問題点もだんだん見えてきたと思います。

その上で地域交通をどう再編していくのかはきちんと考えていく必要があると思います。

 またしても長々と書きましたが千葉県の交通を考える上で参考になれば幸いです。

 

参考リンク

千葉県交通計画課

近未来軌道転換可能性地図

小京都・小江戸探訪

4、人々はどこへと向かうのだろうか〜♪(千葉の鉄道改良プロジェクト)

4-1、千葉の鉄道の特徴

4-2,京成グループの現状

4-3、京成線改善案

4-4、総武TRAINはどこにいく

4-5、京葉線進化論

 

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