北総鉄道2007年度上半期決算レポート

2008.5.19

昨年12月に北総鉄道の2007年度上半期の決算が出ました。ここではその最新決算について少し考察してみます。

 

1、        利用状況〜単価は下がったが順調な成長を続ける〜

利用者

2004/上

2005/上

増加率

2006/上

増加率

2007/上

増加率

2004

定期外

4808

4899

1.9%

5180

5.7%

5674

9.5%

18.0%

通勤

8649

8634

-0.2%

8919

3.3%

9502

6.5%

9.9%

通学

2641

2795

5.8%

2777

-0.6%

2790

0.5%

5.6%

合計

16098

16328

1.4%

16876

3.4%

17966

6.5%

11.6%

収入

2004/上

2005/上

増加率

2006/上

増加率

2006/上

増加率

2004

定期外

2368268

2421257

2.2%

2535166

4.7%

2691459

6.2%

13.6%

通勤

2814906

2800425

-0.5%

2903354

3.7%

3092387

6.5%

9.9%

通学

523965

560857

7.0%

554658

-1.1%

553701

-0.2%

5.7%

合計

5707139

5782539

1.3%

5993178

3.6%

6337547

5.7%

11.0%

1:北総鉄道利用状況(単位:1000人、円)

まずは利用状況に関して、全体では利用者数が前年度3.4%増→6.5%増、運賃収入が前年度3.6%→5.7%と共に前年度を大きく上回り5%を越える高い増加率となっています。

各項目を見ると各年度で乗客増加を牽引してきた定期外では引き続き高い成長を維持し、利用者数9.5%増、運賃収入6.2%増と今年も成長をリードしている様子が見て取れます。

定期に関しては通勤定期に関しては利用者・運賃収入ともに6.5%増で共に高い伸びを見せています。特に運賃収入に関しては定期外を上回る成長振りです。一方通学定期に関しても運賃収入面では-0.2%と減少にあるものの利用者数は昨年の減少傾向から脱しています。

 

利用者

2004/上

2005/上

2006/上

2007/上

定期外

29.9%

30.0%

30.7%

31.6%

通勤

53.7%

52.9%

52.9%

52.9%

通学

16.4%

17.1%

16.5%

15.5%

2:各項目ごとの利用者比率

収入

2004/上

2005/上

2006/上

2007/上

定期外

41.5%

41.9%

42.3%

42.5%

通勤

49.3%

48.4%

48.4%

48.8%

通学

9.2%

9.7%

9.3%

8.7%

3:各項目ごとの収入比率

単価

2004/上

2005/上

2006/上

2007/上

2007増加分

定期外

492.6

494.2

489.4

474.3

316.4

通勤

325.5

324.3

325.5

325.4

324.2

通学

198.4

200.7

199.7

198.5

-73.6

合計

354.5

354.1

355.1

352.8

315.9

4:顧客単価推移(単位:円)

続いてシェアや単価などから詳細を見ていきます。

 定期外に関しては利用者数9.5%増、運賃収入6.2%増高い伸びを示していますが一方で単価の下落も見逃せません。増加分に限って言えば割引のある通勤定期よりも単価が低くなっています。決算書では各種企画乗車券の寄与や北総ウォークに代表されるイベントの効果があがっていますが、高い成長率は前年度から更に続く大型店開業効果、単価の下落は住民による回数券バラ売りの定着などの効果も大きいと考えられます。下半期に関しては引き続きBIG HOP20079月に千葉NT中央のイオンSC南棟などの大型店の開業があり引き続き高い成長が期待されます。また2004年度からの比較では乗客数で18%、収入で13.6%の増加となっていて成長の原動力となっているのが見て取れます。

 

 


写真:20079月に開業したBIGHOP

 またBIGHOP開店と前後して印西牧の原駅周辺の商業施設を運営する8社からなる『印西牧の原駅圏進出企業懇話会』による循環バス「牧の原クルバス」も走り始めるなどガソリン価格高騰の影響か、大型店舗の側でも車に限らない交通の活用への取り組みを始めているのも北総鉄道にとってありがたい限りです。

参考

 シャトルバス案内@BIGHOP

 UR千葉ニュータウン友の会NEWS2007/9/14

 




写真:千葉ニュータウン中央駅に新たに出来たマンション

 続いて通勤定期に関しても利用者・運賃収入ともに6.5%増で共に高い伸びを見せています。決算書では沿線の千葉ニュータウンや2期線沿線での住宅開発の影響が挙げられています。特に千葉ニュータウンでは前年度比4倍増(入居戸数160633)と言う高い伸びを見せているのが印象的です。単価を見ても前年度に比べて極端な変化は無くバランスの取れた開発が進んでいるようです。2004年度からの比較では増客、増収共に9.9%と景気回復の影響とは言え1割近い増加を見せていて堅調な成長を思わせます。

 最後に通学定期では利用者数0.5%運賃収入0.2%減少と昨年の減少基調から脱し、下げ止まりの傾向を示しています。少子化で学生が減少しているとは言え、昨今の開発の進展が減少を食い止めている用紙が見て取れます。学割拡大前年2004年度との比較では5.6%増客5.7%増収と学割拡大の効果が持続しているものと考えられます。

 全体的に見ると顧客単価がやや下がっているとは言え共に5%を超える近年まれに見る増客増収で順調と言って良い状況なのですが、北総自体も努力しているとは言え、他社もうらやむ追い風に関してはただ受けているだけと言う雰囲気を感じざるを得ないような気がします。

今後に目を向けると建築基準法改正の影響が気にかかるところです。千葉ニュータウンをはじめとした沿線開発地域にどれだけの影響を与えるかは不透明とは言え、ここ最近の北総線の乗客増加に大きく貢献している大型店の出店に関しても影響が出てきていることを考えると今度は北総鉄道自身が他の人たちが連れて来てくれた乗客をいかに逃さないか努力する事が重要と考えられます。

 

2、      損益計算書〜無視できない経費増加、ポイントはリース料〜

P/L

2004/上

2005/上

増加率

2006/上

増加率

2007/上

増加率

2004

営業収益

6432

6591

2.5%

6781

2.9%

7166

5.7%

11.4%

うち鉄道

5707

5783

1.3%

5993

3.6%

6338

5.8%

11.1%

うちその他

725

808

11.4%

788

-2.5%

828

5.1%

14.2%

経費

3060

3223

5.3%

3322

3.1%

3525

6.1%

15.2%

減価償却費

1123

1130

0.6%

1092

-3.4%

1117

2.3%

-0.5%

営業費用

4182

4352

4.1%

4414

1.4%

4642

5.2%

11.0%

営業利益

2249

2238

-0.5%

2367

5.8%

2523

6.6%

12.2%

営業外収益

49

69

40.8%

52

-24.6%

62

19.2%

26.5%

営業外費用

1382

1038

-24.9%

1030

-0.8%

1006

-2.3%

-27.2%

経常利益

916

1269

38.5%

1389

9.5%

1579

13.7%

72.4%

法人税等

389

551

41.6%

588

6.7%

672

14.3%

72.8%

当期純利益

526

698

32.7%

795

13.9%

909

14.3%

72.8%

繰越損失

38083

36923

-3.0%

35712

-3.3%

34264

-4.1%

-10.0%

5:損益計算書(単位:百万円)

 続いて決算書を見ていきます。まず損益計算書ですが営業収益は好調な旅客収入を反映して初めて半期で70億円を超えました。増加率を見ると旅客収入5.8%増に対しその他が5.1%とやや低く、その他の収入が減少した昨年に比べると成長軌道に戻したとは言え増客を副業に生かしきれていない状況が浮かび上がってきます。2004年との比較では旅客収入11.1%増、その他14.2%と副業でも頑張っているので今後は副業での新しい展開が期待されます。

 


写真:リース車両の7500

 営業費用に関しては営業収益の伸びこそ下回るものの、経費6.1%、減価償却費2.3%で全体では5.2%と大幅な伸びを記録しています。

決算書を見ると経費に関しては引退した7000系車両の大体で投入された7500系電車、IC営業機器等のリース料乗客増加に伴う線路使用料の増加が挙げられています。また2004年度との比較では15.2%増加と営業収益を超える増加を見せており主な原因として上のリース料、線路使用料の増加が挙げられているだけに両者の見直しは急務と考えられます。

 減価償却費は2005年上期以来の増加となっています。これまで順調に償却が進んできたものの設備更新及び成田新高速絡みの設備投資が徐々に影響を及ぼしてきているのが原因と考えられます。2004年度との比較では0.5%減少とまだ低いレベルではありますが今後の状況には注意を払う必要があります。

 よって営業利益は6.6%増の25.2億円となりました。これは2004年度に比べ12.2%増であり全体的に営業収益より高い水準で推移していることが分かります。

 営業外費用では鉄道建設運輸施設整備支援機構への支払利息が2200万円減少するなど全体で2.3%減少の10600万円となりました。2004年度と比較すると27.2%の減少とは言え、2006年度以降その減少ペースは借入金返済ペースと同レベルかそれ以下となっている為、北総線増益の大きな要因となっていたこの部分での大きな改善は期待できないものと考えられます。

経常利益は13.7%増加し1579百万円2004年度との比較では72.4%の増加と激増と言って良いペースで増加しています。

当期純利益は14.3%増加の909百万円となりました。こちらも2004年度比72.8%と激増しています。

繰越損失は34264百万円で債務超過が100億円を割り込みました2004年度と比較すると累積損失ペースで10.0%減少、債務超過もピーク時は200億円を超えていたのでほぼ半減と着実に債務超過・累積損失脱却への道を歩んでいることが分かります。

 

3、貸借対照表〜新高速、設備更新絡みの借入金動向に注目〜    

B/S

2005/上

2006/上

増加率

増減

2007/上

増加率

増減

2005

流動資産

13899

12623

-9.2%

-1276

12329

-2.3%

-294

-11.3%

固定資産

99711

98389

-1.3%

-1322

100590

2.2%

2201

0.9%

資産合計

113611

111013

-2.3%

-2598

112920

1.7%

1907

-0.6%

流動負債

8024

8157

1.7%

133

9155

12.2%

998

14.1%

固定負債

117609

113668

-3.4%

-3941

113129

-0.5%

-539

-3.8%

負債合計

125634

121825

-3.0%

-3809

122285

0.4%

460

-2.7%

資本金

24900

24900

0.0%

0

24900

0.0%

0

0.0%

未処理損失

36923

35712

-3.3%

-1211

34264

-4.1%

-1448

-7.2%

債務超過

12023

10812

-10.1%

-1211

9364

-13.4%

-1448

-22.1%

負債・資本合計

113611

111013

-2.3%

-2598

112920

1.7%

1907

-0.6%

6:貸借対照表(単位:百万円)

 続いて貸借対照表についてみていきましょう。

 貸借対照表で注目したいのは固定資産及び固定負債の動向です。損益計算書での減価償却費の動向からも分かるように今期では固定資産が2.2%増加と増加に転じ、それが資産合計の増加に結びついています。一方固定負債に関しても0.5%減少と減少こそしていますが、前年度40億円近くの減少に比べて4億円の減少と減少幅が小さくなっていて設備更新及び成田新高速の影響が見て取れます。実際決算書でも松飛台駅のエレベータ設置及び高架橋の耐震補強などが挙げられ、今後本格化する両事業の状況が気に掛かります。

 特に借入金の金利で赤字となっていたことを考えると今後は新たな借入金の金利状況に注目していく必要があるものと考えられます。

 


写真:成田新高速工事が進む小室駅

 

4、資金収支〜成田新高速がらみの設備投資に要注意〜

CF

2005見込み

2005決算

2006見込み

2006決算

2007見込み

収入

14434

14852

19298

18834

22384

3086

経費

9296

9001

15056

14415

17402

2346

支払利息

2105

2072

2007

2002

1934

-73

借入金返済

4459

4539

4282

4662

4194

-88

支出合計

15860

15612

21345

21079

23530

2185

資金過不足

-1426

-680

-2047

-1865

-1146

901

7:資金収支(単位:100万円)

P/L

2004

2005

増加率

2006

増加率

2007見込み

増加率

2004

営業収益

12739

13057

2.5%

13545

3.7%

14332

5.8%

12.5%

営業費用

8374

8822

5.3%

9071

2.8%

9284

2.3%

10.9%

うち減価償却費

2247

2226

-0.9%

2192

-1.5%

2234

1.9%

-0.6%

営業利益

4365

4234

-3.0%

4474

5.7%

5048

12.8%

15.6%

償却前営業利益

6612

6460

-2.3%

6666

3.2%

7282

9.2%

10.1%

営業外損益

-2541

-2005

-21.1%

-2021

0.8%

-1888

-6.6%

-25.7%

経常利益

1824

2229

22.2%

2453

10.0%

3160

28.8%

73.2%

法人税等

737

889

20.6%

1015

14.2%

1344

32.4%

82.4%

当期純利益

988

1113

12.7%

1333

19.8%

1879

41.0%

90.2%

繰越損失

37621

36508

-3.0%

35714

-2.2%

33835

-5.3%

-10.1%

8:年間PL予測(単位:100万円)

続いては資金収支に関して、資金収支に関しては成田新高速の建設が本格化した2006年度以降建設に絡む補助等によって資金収支が膨らんでいます。営業収支に比べて資金収支の額がそれぞれ収入で8052百万円(収入―営業収益見通し)、経費で9008百万円(経費―減価償却費を除く営業費用*2-法人税)大きくなっている事で、うち営業収益の5%強に当る額は消費税でそれぞれ700百万円程度と見積もってもそれぞれ7352百万円、8308百万円が残ります。この収支差は松飛台駅のエレベータ設置や耐震補強も挙げられていますが、大半が成田新高速に対する負担と思われます。

更にこの収支差956百万円は資金過不足額1146百万円とほぼ均衡し成田新高速に対する北総鉄道の負担が無視できないものである事が伺えます。

今後は引き続きこの設備投資にも注意を図っていく必要があるものと考えられます。

 




写真:成田新高速の工事が進む新鎌ヶ谷駅の新北口

 

5、沿線自治体は口も金も出せるか〜成田新高速開業を巡る動きから〜

さてここ最近の動きとして成田新高速鉄道開業に向けて沿線の各地域で様々な動きが現れています。北総線の決算とは直接的に関係は無いですが、最後に少し見ていこうと思います。

参考

新型スカイライナーが現れるので・・・走る地域について少し書いてみるぶらざーてぃのblog

京成電鉄プレスリリース
新型スカイライナー特設HP

 


写真:成田空港アクセスを担うスカイライナー

 

5-1、松戸地区〜東松戸への特急停車〜

 


写真:東松戸駅

成田新高速鉄道 早期開通に向けた取り組み@松戸市HP

 まず沿線の松戸市では市内の駅でJR武蔵野線との乗換駅でもある東松戸駅への一般特急の停車の希望が出ています。

 「成田高速鉄道事業化推進に関する調査報告書」と言う報告書(以下報告書)、によると成田空港高速鉄道でのダイヤ及び停車駅は以下のようになっています。

スカイライナー:上野、日暮里、空港第2ビル、成田空港(1時間3本運行)

特急:上野、日暮里、青砥、京成高砂、新鎌ヶ谷、千葉ニュータウン中央(以下NT中央)、印旛日本医大(以下日医大)、成田ニュータウン北(以下NT北)、空港第2ビル、成田空港(1時間3本運行)

 実際JR武蔵野線との乗換駅である東松戸への停車は言及が無い為、市として取り組んでいるといった感じです。

実際28000人以上の署名を沿え、国土交通大臣、鉄道局長、堂本千葉県知事、京成電鉄へ陳情を行い熱意を見せています。

 

 

2000

2005

増加率

乗換

東松戸

5070

5931

17.0%

JR武蔵野線

新鎌ヶ谷

9457

10073

6.5%

東武野田線、新京成線

NT中央

12942

13143

1.6%

 

印旛日本医大

710

1120

57.7%

 

2ビル

9389

11473

22.2%

JR成田線、京成線

成田空港

6118

6426

5.0%

 

9:新高速特急停車駅及び東松戸駅の1日の乗車人員推移(単位:人/日、千葉県交通計画課HP参照)

実際停車予定の各駅と比較すると確かに乗客数は多くないですが、乗客の増加率は高くかつ既存の空港アクセス路線である京成線、総武快速線との乗換が出来ない武蔵野線との乗換ができると言うのは強みだと言えます。

空港アクセス鉄道と言うのは基本的に大きな荷物を抱えた乗客が多く乗換が嫌われることを考えると1回乗換でいける地域は広いほど有利でそう言った意味では停車は検討に値する事とも思えます。

個人的には停車させるのが妥当と考えますが如何でしょうか?

 

5-2、千葉NT地区〜再び浮上する運賃値下げと北総の特殊事情〜

 


写真:ほくそうはるまつりで賑わう千葉ニュータウン中央駅

北総線 高額運賃の研究@月刊千葉ニュータウン
北総線の運賃値下げを実現する会
(署名運動を行っている住民団体)

 続いては千葉ニュータウン、現在住民団体による署名活動が行われ、5/14現在76,519名の署名が集まっているようです。今後も10万人を目標に署名集めを進めているようなので賛同される方はどうぞといったところです。

 一方地元の地域新聞月間千葉ニュータウンではリンクの特集記事を掲載し、成田空港アクセス鉄道開業と言うラストチャンスを生かすべく機運を盛り上げていこうと活動をしています。

 実際これらの活動に於いて挙げられているのは報告書では不明確だった京成電鉄から北総鉄道に支払われる予定の線路使用料をはじめとする北総と京成グループの間での金銭のやり取りを巡る契約ですが以下の点がポイントとなります。

 

 

金額

契約内容

線路使用料→千葉NT鉄道

20

千葉NT鉄道内3駅(NT中央〜日医大)の乗客に比例といわれる

建設費:北総鉄道→

不明

不明

京成電鉄→線路使用料

不明

不明

想定1

31.68

千葉NT鉄道の契約をベースに距離換算

想定2

146.67

千葉NT鉄道の契約をベースに資産額換算

想定3

不明

新高速鉄道による増加コストのみ負担(アボイダブルコスト)

10:線路使用料を巡る構図(単位:億円、想定1は北総鉄道19.8km、NT鉄道12.5km、想定2は北総鉄道1100億円、NT鉄道150億円で試算)

     京成電鉄から北総鉄道への線路使用料はどういった契約でいくら支払われるのか

     その際北総鉄道が千葉NT鉄道にいくら線路使用料を支払うことになるのか

     北総鉄道は今回の高速鉄道に関連していくら建設費を支払うことになるのか

 

一応想定では現在の北総鉄道が千葉NT鉄道へ払っている線路使用料をベースに算定したのですが北総鉄道から見た最悪のケースとしては新高速開業によって増える最低限のコストしか支払われないアボイダブルコストと言うやり方(JR貨物がJR旅客会社に対して払っている線路使用料の選定基準)も北総が京成の子会社である以上可能性としては否定できない話です。

しかもどの考え方が妥当かと言うのは視点を変えればいくらでも妥当性が見出せる為、地域住民が自分たちに優位な選択を求めて動くと言うのは非常にまっとうに感じます。

 

5-3、千葉NT地区2〜学割補助を吸い取ってしまう存在〜

「通学定期への自治体助成を振り返る」北総線の運賃値下げを実現する会

北総線 高額運賃の研究@月刊千葉ニュータウン([6]誰がための通学定期補助)

 さて日本鉄道賞子育て支援賞も受賞した学割補助ですが実は沿線では意外に評判が悪いようです。上のリンクの前者では

     6400万円の増収があったがこの増収も結果的に半分近くが法人税として国に持っていかれる

     だったらこれを使って更なる学割の拡大を

と言ったことが問題提起されています。また後者では

2010年に千葉NTに高校が移転するんだから通学定期補助は辞めてその分移転する高校の充実にお金を使うべきだ

 と言う提起がなされています。確かに考えようによっては増収の6400万円だけでなく沿線自治体が血税から出した2億円(北総線の純利益は補助の2億円を越える額)の補助全体が実は法人税の対象とも取れることを考えると沿線の問題提起は今後同じ施策を行おうと考えている地域の参考になるのではないかと考えられます。

 

5-4、成田地区〜土屋駅はどこへ行く〜

 


写真:土屋駅建設予定地近くのイオンSC

(中)「土屋駅」地元が熱望@読売新聞
土屋駅実現に向けた新たな動き@小池まさあき 日々の活動日記

 続いては成田地区、成田地区では成田空港アクセス鉄道とJR線との交点である土屋地区への駅設置へ向けて署名運動が行われています。もともとは成田空港アクセス鉄道の前身成田新幹線の駅設置が予定されていた地区なのですが、報告書等では取り上げられず、また京成側でもダイヤへの影響からか消極的なようです。ただし現在の土屋駅予定地周辺を見ると

     年間1100万人の買い物客を集めるイオン等商業集積がある

     JR成田線佐原方面との交点にも近く乗換駅としての可能性がある

と言った点があり地元が期待するのは良く分かります。一方で

     駅の建設費の負担

     ダイヤへの影響を避ける為の対策(極端に言えば成田NT北〜土屋複線化すらありうるかも)をどうするか

     乗換駅として整備するにしてもJR駅をどうするか

と言った部分をどうするかと言う問題があります。現状土屋駅を作らない方向で建設が進んでいるだけに地元がどれだけこれらの問題へ取り組んでいくかが大きなポイントとなると考えられます。

 

5-5、まとめ〜沿線自治体は金も口も出せる株主になれるか〜

松戸〜成田まで沿線各地域で出てきている動きを見てきて感じるのは沿線地域の「この路線を機に地域の問題を解決したり、地域の価値を上げたい」と言う積極的な気持ちです。

ただしこれらの動きを考える際に非常に重要になるのは印西市・白井市をはじめとする自治体の動きです。

千葉NTの運賃問題に関して見る際に良く「高額運賃によって黒字化した北総鉄道は沿線の宝」といった言われ方がされ、地域住民が主役と言った雰囲気もあるのですが、大きな鍵を握っているのは各鉄道に出資をし、株主として口を出せる自治体ではないでしょうか?動く為に情報を集めるのにも単なる1個人や住民団体よりも、少数株主とは言え出資者と言うポジションは大きいですし、補助等のアプローチも出来ます。そう言った意味で今後沿線自治体がきちんと北総鉄道、アクセス鉄道に物を言い、場合によってはお金も出すと言うスタンスをきちんと取れるかが大きなポイントと言うことになると思われます。

そう言った意味を含めて沿線自治体の今後の動きが更に注目されるところです。

 

関連リンク

北総鉄道

北総・公団鉄道運賃値下げを実現する会

月刊千葉NT

街づくりかまがや

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Dachs飼主の旅と研究

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